日本産Crypsithyris属(ヒロズコガ科ヒロズコガ亜科)の分類学的再検討
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概要
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Crypsithyris属(新称:スカシモンヒロズコガ属)はヒロズコガ科ヒロズコガ亜科に属し,これまで40種ほどが東南アジア等から知られている.本属は衣類害虫で知られているMonopis属と同様に前翅中室に半透明紋を持つが,前翅のR_1の欠如,♀交尾器の剛毛により識別できる.これまでCrypsithyris属の3既知種が日本から知られているが,これらの記載は不十分である.本研究では日本産Crypsithyrs属の1新種を含む4種について分類学再検討を行なった.Crypsithyris japonica Petersen&Gaedike,1993(新称:ウスグロスカシモンヒロズコガ)(Figs 1A,2A,3,7)中室の半透明紋の外側に黒点を持つ.雄交尾器のsaccusは細く,valva腹縁が中央で角張る.♀交尾器のcorpus bursaeのフランジ状の骨片は1-2個の発達した突起を持つ.Crypsithyris saigusai Gaedike.2000(新称:コガタスカシモンヒロズコガ)(Figs 1B,2B,4,8)外見はC.japonicaに酷似するが,やや小型.雄交尾器のvalvaは,中程から先細りになる.♀交尾器は刺状の独立したsignumを欠き,corpus bursaeのフランジ状の骨片は6-8個の細長い突起を持つ.幼虫を飼育して雌雄のコンビネーションを確認したところ,原記載に用いられた雌個体はC.cana sp.nov.であることが判明した.Crypsithyris cana sp.nov.(新称:ハイイロスカシモンヒロズコガ)(Figs 1C,1E,2C,5,9)中室の半透明紋の外側に斜めに伸びる黒斑を持つ.雄交尾器のvalva内面の先端部周囲と腹側中央に剛毛が密に生える.♀交尾器は20個程の小形,刺状の独立したsignaを持つ.Crypsithyris crococoma Meyrick,1934(クロモンチビヒロズコガ)(Figs 1D,1F,2D,6,10)前翅は半透明紋を欠く.雄交尾器のvalvaは背方に強く反る.♀交尾器のcorpus bursaeのフランジ状の骨片は1対のヘラ状の突起を持つ.またこれらの生活史についても調査し,C.japonica,C.saigusai,C.cana sp.nov.は岩や樹幹に生育する粉状の地衣類を,C.crococomaは地表で落ち葉を食することが明らかになった.落ち葉食は,ヒロズコガ亜科において初記録である.
- 日本鱗翅学会の論文
- 2002-01-10