カテゴリー・マネジメントの収益性管理 : 小売店における陳列在庫管理を支援する収益性管理モデルの構築
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概要
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近年の小売業の経営は,置けば売れるという売り手本位の発想から脱皮し,多様化した消費ニーズに応じた買い手本位の発想へ明確に転換すべきであると言われ続けている.たとえば,いち早く変革の必要性に気づいたイトーヨーカ堂は,業務改革のコンセプトを鮮明に打ち出し,店舗運営の生産性向上に成功したと言われている.米国においても,ECRやカテゴリー・マネジメントという方法論が提唱され,消費者ニーズを満足する商品陳列と流通/生産の生産性向上を同時に達成することの重要性が説かれている.構造転換に成功した小売業者もある一方で,依然として,低収益に喘いでいる小売業者も多く,全般的には,小売業者の収益性は低下の一路を辿っているようである.本稿は,このような背景のもとで,小売業者の収益性の低下が,商品の陳列在庫管理の不適切さに基因する所が大きい点に着目し,小売店における陳列在庫管理を支援する収益性管理モデルを構築しようとするものである.まず,店頭における陳列在庫管理の理論研究を行う.当該品の在庫を保有することで他品の販売機会損失が発生することを考慮し,小売業者の在庫効率とスペース効率を一斉に高めることのできる在庫管理技法を開発する.さらに,商品陳列の優先順位を評価する指標としてマージナル・スループット(MT)を導入し,死に筋商品の排除と新商品投入を行いながら,新たな陳列編成を作成する際の意思決定を支援しようとするものである.本稿で開発した方法論は,以下のような特徴を有することで店舗の生産性に資することができる.まず,小売業者にとってのSKU最適所要量は,従来の在庫管理手法で計算された個別最適所要量より全般的に小さくなることが明らかになった.各SKUの在庫効率とスペース効率が一斉に高まるので,従来と比較すると,商品の品揃えを豊富にしつつ陳列効率を高めることが可能になると考えられる.さらに,MT指標を用いることで,死に筋排除の意思決定を客観的に行うことが可能になる.これらを実施することで,店舗運営のマネジメント・サイクルにおいて,カテゴリーの新陳代謝(カテゴリーの活性化)を高める効果が生じると考えられる.
- 2000-09-30