「信念」概念の再考 : 米国の保守福音派キリスト教徒について
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概要
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本稿は、「ファンダメンタリスト」と呼ばれ強固な「信念」を持つとされる米国の「保守福音派キリスト教徒」を事例として、「信念(動詞形「信じる」)」という記述概念の再考を試みるものである。「信念」という概念は、それによって描かれ(得)る他者の特徴がどのようなことなのかということがあまり議論されることのない、問題含みの言葉である。そしてこの言葉は、特に宗教を対象とした人文学・社会諸科学において、他者を描くための記述概念として頻繁に用いられる極めて重要なものでもある。この概念を定式化するとともにその射程を明確化することは極めて重要な作業だといえるだろう。より具体的には、保守福音派キリスト教徒に関するこれまでの研究において「信念」という概念がどのような意味で用いられてきたのか、何を記述してきたのかということを精査していく。その上で、それを事例と照らし合わせながらその妥当性について検討を行うとともに、言語哲学の理論的成果を援用しながらより適切な「信念」概念の定式化を目指す。こうした作業を通じて「信念」という概念の限界と今後の可能性を明らかにすることが、本稿の目的である。