構造化理論から知識の社会学へ(一)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ギデンズの構造化理論は「そもそも社会が存在するとはどのようなことであるのか」という存在論的な問題設定から出発して、認識論的な二元論に制約された西欧社会科学が陥りがちであった物象化と主意主義という二つの誤謬を克服しようとした独自の社会理論である。上記の問いから出発したギデンズが到達した答えは、社会構造は人間の行為主体性によって作られていると同時に、それを作り出す媒体でもある」という「構造の二重性」という観点から社会の存在を説明することだった。「構造の二重性」概念を基本的に承認しつつ、これを批判的に発展させようとするポストギデンズの構造化理論においては、二重性概念を、すべての社会事象に対して単線的に適用するのではなく、実践的な知識に支えられている「当たり前のこととして受け止められた二重性」と論述的な知識に支えられている「批判的で自省的な二重性」を両極とする連続体として把握することで、社会理論としてそれをさらに強化していこうとする立場が登場した。ポストギデンズの構造化理論においては、行為主体の知識能力をめぐって、ギデンズが積み残した課題を拾い上げて、より精密な考察を展開することに関心が集中している。以上の考察を踏まえれば、構造化理論に関するポストギデンズの議論を批判的に検討し、これを「知識の社会学」という方向性でさらに深めていく、という新たなテーマが浮かび上がってくる。次号に掲載予定の本論文後半部分では、行為主体性概念、構造概念に関するポストギデンズの議論をさらに詳細に検討するとともに、知識の社会学を「雇用関係の社会理論」として展開していくことを目指して、具体的な事象をあげて若干の試論を行う。
著者
関連論文
- 構造化理論から知識の社会学へ(一)
- 平成不況期の人的資源管理改革による従業員意識の個人化 : 市場化する雇用関係
- 成果主義賃金制度が生み出した職場と労働者の変化
- 構造化理論から知識の社会学へ(2)
- 雇用関係の社会理論(III)
- 雇用関係の社会理論(II)
- 雇用関係の社会理論用(1)
- 東アジアにおける国際協調と「人の移動」--フィリピン人外国人労働者受け入れをめぐる最新動向 (アジアにおける国際協調)
- 雇用 ITエンジニアの技能形成と人材育成--その現状と課題
- オトゥール『労働と生活の質』 (特集 労働研究の流れを変えた本・論文) -- (産業社会学・経営・産業心理学)
- ワークシェアリングの観点から見たオランダの労働市場改革--ワッセナー合意からの20年 (特集 諸外国におけるワークシェアリング)
- ヨーロッパ現地法人経営の現実と対応--ドイツ、フランス、オランダに見る労使問題の底流 (特集 職場のトラブル 対応のポイント--欧州現地法人からのメッセージ)
- 英国、アイルランド、スペインの労使関係事情 (特集 在欧日系企業の最近労働関係事情)
- 書評 M.カリーほか著『英国の労働--第4回英国職場雇用関係調査より』
- 特別講演 変貌する産業組織--21世紀に向けた勤労社会の展望 (産業カウンセリング学会 第3回大会特集)
- 最近のEU労働事情--進展する人の移動と拠点再配置にどう対応するか (特集 ユーロ導入から1年のEU)
- 人材育成の現代的課題--管理の罠と放任の罠
- グロ-バリゼ-ションの時代の生活と企業--欧米日系企業の考察 (生活の組織)
- 情報化社会における日本の企業と勤労者
- 情報化社会における日本の企業と勤労者
- 新時代の日本的経営 (〔亜細亜大学〕経営学部開設20周年記念講演会および記念シンポジウム)
- 新時代の日本的経営
- Human Resource Management of Foreign Staff Employees in Japanese Companies
- 企業行動の多角化・情報化とホワイトカラーの労働
- 産業社会の転換とこれからの労働問題
- 産業社会の転換とこれからの労働問題
- 「西ドイツの技術革新と社会変動」野村正実,N.アルトマン編
- 労働者意識の変容と労務管理の課題 : 新世代労働者の日米比較
- 労働組織の改善に関するILOの政策(経営会計の研究)
- 日本企業の労働組織と労働生活の質
- 西ドイツの事業所従業員会Betriebsrateに関する考察--企業内労使関係の研究-2-
- 労働組織革新の理論-下-
- 西ドイツの事業所従業員会Betriebsrateに関する考察--企業内労使関係の研究-1-
- 産業民主制プロジェクトと労働環境法--ノルウェ-における労働組織の変革 (行動科学の研究-1-)
- 労働組織革新の理論-上-
- ワ-ク・イノベ-ションの展開--アメリカ企業における労働組織の革新
- 日本的経営の論理をさぐる-9-占部都美氏の日本的経営論
- 日本的経営の論理をさぐる-8-岩田竜子氏の日本的経営論--「日本的経営の編成原理」「現代日本の経営風土」より
- 日本的経営の論理をさぐる-7-間宏氏の日本的経営論-下-
- 日本的経営の論理をさぐる-6-間宏氏の日本的経営論-上-
- 日本的経営の論理をさぐる-5-山城章氏の日本的経営論--「日本的経営論」(山城章著)より
- 日本的経営の論理をさぐる-3-吉野洋太郎氏の日本的経営論--「日本の経営システム」(吉野洋太郎著,内野幸雄監訳)より
- 日本的経営の論理をさぐる-2-アベグレンの業績に学ぶもの--「日本の経営」(アベグレン著)より
- 構造化理論から知識の社会学へ(3)