一九二〇年代の「家」制度改正論 : 臨時法制審議会の民法改正構想を素材に
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概要
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本稿では、臨時法制審議会が作成した民法改正構想の分析を行った(一九一九年に審議開始、一九二七年までに民法改正構想が完成)。中でも、戸主権や父母の権利の強化離婚制度における女性の権利向上、長男子単独相続制度の修正、「家」の単位の修正をめぐる議論を素材に、臨時法制審が1妻や子どもなど家族員の権利伸張、2家族生活保護の強化を通じて、「家」の強化を行おうとしていたことを明らかにした。先行研究では、「家」強化と家族員の権利伸張を相矛盾するものとして捉え、両者を対立させて理解する傾向が強い。しかし、改正構想を作成した当時の論者たちは、両者を対立するものとして理解していたわけではなく、むしろ「家」強化のために、家族員の権利伸張や家族生活保護の強化が必要だと考えていた点に着目し、臨時法制審の民法改正構想を描いた。家族員の権利伸張、家族生活保護の強化の傾向は、二〇世紀を前後して先進資本主義各国で追求された家族法の改正方向である。こうした二〇世紀前後の家族法の改正方向を、家族法の現代化と捉えるならば、臨時法制審議会の改正構想も同様のなかみを持っている。また、「家」の強化のために、家族員の権利伸張、家族生活保護を行うと構想されていることから考えると、臨時法制審議会の民法改正構想は「家」を現代化しようとしたものとして位置づけることができるのではないか、と結論づけた。