実践的唯物論のエコロジー的形態
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
マルクスの哲学は、対象の変革を主張する実践的唯物論である。自然にかんしては、人間の能動的な自然の変革を主張する。これは、エコロジー的であるのだろうか。本論文は、この問題を論じようとするものである。マルクスは、人間の労働における目的意識性を強調するが、この目的意識性は、二重の視点から把握される必要がある。従来、生産物産出の目的意識性として解釈されてきたが、同時に、労働の過程や結果のなかで環境に及ぼす影響を配慮する目的意識性としてもとらえることができる。このような二重の視点にたつ目的意識性は、自然にたいする人間の制御・支配ではなく、人間と自然との関係の制御のなかで把握されるべきであろう。この視点から、マルクスは、人間の生活を人間と自然との物質代謝としてとらえ、環境破壊を人間と自然の物質代謝の撹乱とみなしたが、この撹乱は、初期マルクスが「疎外された労働は人間から自然を疎外する」と述べていることと重なり合う。マルクスは、自然の疎外、人間と自然との物質代謝の撹乱は、資本主義的システムのなかでひきおこされることを主張した。環境破壊もよりいっそう深刻になっている今日の「ポストモダン的状況」のもとで、マルクスが生きていた時代との差異を踏まえながらも、かれの視点を生かすことが大切になる
著者
関連論文
- 『資本論』を読もう (大特集 マルクス経済学のすすめ2010) -- (大学教員・研究者22人からの 経済学のすすめ)
- あなたの疑問にこたえたい(第2回)人間は身勝手で自己中だ。だから、連帯し団結するのは難しい?
- 現代と思想家--初期マルクス 現代を問うマルクスの疎外論
- 実践的唯物論のエコロジー的形態
- この一冊 『経済学・哲学草稿』長谷川宏訳、『共産党宣言』的場昭弘訳
- リレー式・人権講座(10)環境権の思想
- 日本における『経済学・哲学手稿』の研究--疎外論を中心に
- 3・11と9・11の衝撃--問われる近代の工業文明 (特集 検証・東日本大震災/福島原発事故)
- 中国における環境思想の展開 : 非人間中心主義批判から持続的可能な発展へ
- ヘーゲル弁証法の批判的精神
- 主体性論争の批判的検討
- 社会的生活過程としての生活世界
- ヘーゲルの「神的三角形」について
- 土台 : 上部構造論把握の基礎視角
- 温暖化問題と価値観
- 環境思想の先駆者、レイチェル・カーソン
- なぜドイツは原発から撤退し、日本は再稼働するのか (原発再稼動ノー)
- 岩崎允胤先生の思想と仕事--平和への想いを中心に
- 脱原発への思想と構想力 (特集 原発ゼロの経済社会)
- 環境思想についての私の立場 (環境思想の課題と論点--世代間の対話を求めて)
- 書評 J・クラップ/P・ドーヴァーニュ著『地球環境の政治経済学--グリーンワールドへの道』
- 「唯物論と経験批判論」出版一〇〇周年に思う
- 環境政策の陥穽--技術主義と道徳主義 (特集 環境の世紀への思想と行動)
- 温暖化対策と企業の社会的責任 (特集 プラス2℃の危機--地球温暖化と洞爺湖サミット)
- 家庭でのとりくみ--どう有効か? 問題点は? (特集 プラス2℃の危機--地球温暖化と洞爺湖サミット)
- 読書ノート 吉田傑俊『市民社会論』を読む