公的研究セクターのイノベーション・モデル : 公的研究セクターの研究段階のポジショニングが,研究システム,企業との連携システムおよびパフォーマンスに与える影響
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概要
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産業技術研究を遂行する公的研究セクター(公的研究機関や大学の組織)には,企業の研究の段階(萌芽技術,中核技術,製品・実用技術)に対応したポジショニングを取る典型的な事例が存在する。それらの典型的な事例として,カリフォルニア大学に設置されているBSAC(萌芽技術研究型),ベルギーのIMEC(中核技術研究型),ドイツのフラウンホーファー協会(製品・実用技術研究型)を,また科学研究型としてドイツのマックス・プランク協会を選定した。これらの4事例の比較により,公的研究セクターのポジショニング(公的研究セクターの型)が研究システム(研究組織の性格,評価項目等)や企業との連携システム(顧客企業との研究課題の調整,企業資金の導入等),その結果としてのパフォーマンス(論文数,企業資金獲得額,特許料収入それぞれを総運営資金で除したもの)に与える影響を分析した。その結果,公的研究セクターのポジショニングが科学研究型から製品・実用研究型になるに従い,研究システムもそれに追随し,一方,企業との連携システムは企業に対してより個別的になることが明らかとなった。このポジショニングの変化に従い,論文数パフォーマンス(論文数/総運営資金)は単調に減少したが,企業資金獲得額パフォーマンスや特許料収入パフォーマンスとポジショニングとの単純な相関は見出せなかった。これらの4事例に,産業技術研究を遂行する公的研究セクター4事例を加えた比較により,企業資金獲得額パフォーマンスが増加するほど,論文数パフォーマンスが減少するという緩やかな相関が見出された。最後に,以上の分析結果を踏まえ,わが国の産業技術を指向する公的研究セクターに対して以下のインプリケーションを述べた:1)企業の研究とのすりあわせおよび企業資金導入が重要であること,2)企業と連携する場合,適切な連携方式を選択すべきこと,3)機関の評価指標に研究成果の側面(論文数等)だけでなく,企業との連携の強さを表す指標(企業資金獲得額等)を設定すべきであること。
- 2010-05-14
著者
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