都市の食,農村の食 : 清末民国期,湖北省における日常食の階層性
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概要
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本稿では清末から中華民国期にかけての湖北省を対象として都市部と農村部での日常食について検討した。生活環境(都市・農村)と経済的な階層(富裕層・貧困層)の二点を分析の軸として日常食の内容を分類すると以下のようにまとめられる。都市部では富裕層の日常食にはコメが,貧困層の日常食にはムギが高い頻度で用いられた。一方,農村部では都市にコメ・コムギを移出し銭貨を獲得する必要から意図的にオオムギやサツマイモなどを利用し,コメを商品作物に充てる戦略的な利用形態が見られた。こうした実態を通じ,食の主体を取り巻く環境に応じて日常食として利用する作物が異なるという多様性を明らかにし,食物史における新たな側面を提示した。
- 2010-05-25