格子QCDに基づくグルーオンの非摂動的性質の解析 : グルーオンの非摂動的伝播関数とスペクトル関数
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概要
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本研究では量子色力学(QCD)を構成している基本要素であるグルーオンの低エネルギー領域における非摂動的性質の解析を行う.QCDはそのスケールに応じて様々にその振る舞いを変化させるが,特にハドロン物理で重要なスケールである中間的な領域(0.1〜1.0fm)に注目した.格子QCDを用いて,この領域におけるLandauゲージでの非摂動的グルーオン伝播関数の解析を行なった.本研究で解析したグルーオンの非摂動的性質は,グルーオンの有効質量とその伝播関数の関数型である.グルーオンの有効質量は中間的な領域0.1〜1.0fmにおいて,およそ400〜600MeVの値となり,この数値には近距離で軽く,長距離で重いという特徴が見られた.また,伝播関数の解析からグルーオンの非摂動的伝播関数は0.1〜1.0fmの領域において,4次元Euclid時空距離r=(x_μx_μ)^<1/2>のYukawa関数e^<-mr>/rで表されることが判明した.このYukawa型伝播関数は特徴的な関数形であり,本論文ではYukawa型伝播関数の物理的解釈についても議論を行なった.本研究では更に,Yukawa型グルーオン伝播関数に基づきグルーオンの有効質量およびスペクトル関数の解析的表式の導出を行った.有効質量の振る舞いは格子QCDによる解析結果をよく再現し,その漸近型からはYukawa関数の質量パラメータmがグルーオンのIR領域における有効質量と対応付けられる量であることが判明した.Yukawa型関数を基に導出されたグルーオンのスペクトル関数は,正の無限大に発散する留数をもつデルタ関数と負の連続スペクトルという特徴的な関数であり,通常のハドロンのスペクトル関数とは大きく異なる.このようなグルーオンのスペクトル関数の振る舞いについては,今までに定性的な議論は行なわれてきたが,具体的な関数型として導出がなされたのはYukawa型伝播関数を基に行なった,本研究が初めてである.
- 2010-05-20
著者
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