後鼻孔鼻茸の巨大化とリンパ管分布密度について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
末梢の毛細リンパ管は毛細血管と同様に,組織間隙に漏出した血液中の水分,電解質,蛋白質などの細胞外成分を再吸収する働きがあるためリンパ管の機能が障害されると浮腫がおこることは知られている.以前より鼻粘膜にはリンパ管とリンパ網が存在するが,副鼻腔粘膜にはリンパ管があまり発達していないという指摘があった.そのため,副鼻腔におけるリンパ管環流障害によって粘膜浮腫を起こすことが鼻茸における成因の1つの要素ではないかと考えた.鼻茸の中でも後鼻孔鼻茸は上顎洞粘膜から発生して,後鼻孔を閉塞するほど単房性に巨大化するため,通常の副鼻腔炎に伴う鼻茸とは臨床的には区別される.しかし,組織学的な両者の区別については明らかでない.私は,それぞれの鼻茸の発生する粘膜に何か違いがあるのではないかと考え,鼻茸と鼻・副鼻腔粘膜における血管及びリンパ管の分布について検討した.対象の粘膜及び鼻茸は血管内皮細胞に対して特異的な抗体であるCD34とリンパ管内皮細胞に対して特異的な抗体であるD2-40( 抗ポドプラニン抗体)で染色した.1検体につき光学顕微鏡の100倍視野にてそれぞれ5視野ずつカウントし単位面積(1 mm2)あたりのリンパ管数を算出した.その結果後鼻孔鼻茸は他の鼻茸と比較してリンパ管が有意に少なく,また後鼻孔鼻茸の発生する上顎洞も他の鼻・副鼻腔粘膜に比べてリンパ管が有意に少なかった.一方,血管の分布に関して有意差は無かった.このことは,後鼻孔鼻茸が巨大化する要因としてリンパ管が少ないこと,そしてそれは発生母地である上顎洞粘膜にリンパ管がないことが起因していると結論づけた.
- 2010-07-25
著者
関連論文
- 後鼻孔鼻茸の巨大化とリンパ管分布密度について
- MW1-4 気道上皮のcharge barrierに対するLPSおよびpoly (I:C)の効果(MW1 アレルギー性鼻炎・結膜炎研究の進歩,ミニワークショップ,第60回日本アレルギー学会秋季学術大会)