オーストラリアにおけるグローバル教育実践の具体像 : 単元「水は金よりも大切?」の授業分析を通して
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概要
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オーストラリアでは,グローバル教育プロジェクトという国家プロジェクトを通して,グローバル教育が推進されている。その成果の1つに,『グローバル・パースペクティブ・シリーズ』(以下,『シリーズ』)と呼ばれる単元事例集の作成が挙げられる。本研究の目的は,具体的な授業において『シリーズ』がどのように使用されているのか,また,何か豊かなグローバル教育実践を支える要因となっているのかを明らかにすることである。まず,オーストラリアのグローバル教育研究をリードしてきたコルダー(Calder,M.)らの所論に基づくグローバル教育の学習上の強調点を確認した。続いて,『シリーズ』にはそうした強調点が十分には位置づけられていないという制約があることを指摘した。以上をふまえて,小学校4・5年生を対象に実践された単元「水は金よりも大切?」を分析した。検討の結果,まず,『シリーズ』は実践に生かしやすいものとして教師に捉えられ,使用されていることと,『シリーズ』の抱える制約が教師によって認識され,それを乗り越えるように単元例に変更が加えられながら使用されている例が見られることを明らかにした。続いて,教師の専門性と,グローバル教育の前身である開発教育の理論と実践の蓄積および人材の存在が,豊かなグローバル教育実践を支える要因となっていることを指摘した。
- 2009-03-31