授業における「ずれ」に関する一考察 : 上田薫の「ずれ」の概念の検討と事例の考察を通して
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概要
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本研究は,子どもの主体的な学びとはいかなるものかという問題関心を出発点に,子どもと教師の主体性のぶつかり合いの場としての「ずれ」を重視している上田薫の理論に着目し,授業における「ずれ」のもつ意味とその具体的なあり方を考察したものである。第一に,「ずれ」に積極的意義をとらえた上田の教育理論の統一的な立場,すなわち動的相対主義の考え方とそこでの「ずれ」の位置づけを明らかにした。第二に,とりわけ授業における「ずれ」とはどのようなものとしてとらえられるか,その対象および特質を考察した。その考察を通して,「ずれ」は教師と子どもの主体性のぶつかり合いの場,すなわち対立の場であると同時に「ずれ」を介して相対するものがつながりを深めていく場であること,そこに「ずれ」と単なる「くいちがい」との相違点が見い出された。そしてこれらの考察を踏まえて,第三に,小学校の社会科の授業を分析し,「ずれ」が顕在化され追究される過程と「ずれ」の追究を通しての認識の深化についてより具体的な考察を行うとともに,「ずれ」を生かす授業の実践に向けての検討を行った。
- 2008-03-31