戦後イタリアにおける歴史教育理論の変遷 : 歴史学と歴史教育の関係に着目して
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概要
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本稿の目的は,戦後イタリアにおける歴史教育理論の変遷を明らかにすることである。そのために,教育雑誌および理論書の文献研究を行い,その基礎作業をもとに主要な論文の分析・検討を行った。現在のイタリアにおいて歴史教育を革新したと位置づけられているマットッヂイ(Ivo Mattozzi)とランペルティ(Raffaella Lamberti)の論文では,従来の歴史教育の持つイデオロギー性が指摘され,歴史学者と同じような活動である「探究」(ricerca)を行う歴史教育が提起されている。その後両者の主張に対しては,「探究」の前提を探るという問題意識からグアラッチーノ(Scipione Guarracino)らによって批判が加えられ,「探究」の前提には歴史的な事象に関する知識も必要だということが認識された。「探究」に関する議論の蓄積は,歴史教育研究団体によるカリキュラム案として結実している。戦後イタリアにおける歴史教育理論の変遷においては,アナール学派を代表とする歴史学から大きな影響が見られる。歴史学は,知識の習得だけではなく,「探究」する能力を教育目標として取り出す役割を果たした。目標として取り出された「探究」する能力は,教育的な知見によってカリキュラムの中に位置付けられた。このように,「探究」を教育的な知見によって実現しようとしているのが,イタリアにおける歴史教育理論の特徴である。
- 2008-03-31