人類の進化と北方適応(<特集>人類史の空間論的再構築-移動、出会い、コンフリクト)
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概要
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本稿は人類の進化と北方適応について、サピエンス化に焦点をあてながら、自然と文化の人類学という視点から解明することを目的とする。そのため、第1に現在の北方狩猟採集民に見られる心の特徴、特に心の社会性を抽出し、その文化・生態学的基盤を明らかにした。第2に、これが4万年前の後期旧石器時代人にまで遡り得るかどうかを検証し、洞窟壁画に見られる「魔術師」、「不可解」とされていた図形が動物-人間という混成像の表現であり、その背後には初原的同一性と互恵性の認識という心のはたらきがあったと考えられることを示した。そして、第3に、心の進化が現生人類の北方適応にとっていかなる意義を有するのかについて、サピエンス化が北方適応の前適応として位置づけられること、さらに人間と動物との間の関係の認識に基づいた世界観が周氷河生態における行動戦略として働いたことを指摘した。最後にこれらの知見に基づき、人間性の起源、人類進化のメカニズムにおける行動的適応能の重要性、人類の将来と人類学の役割など、心と人類進化の展望について述べた。
- 2010-03-31