高校生物の観察教材としてのイヌビワ-イヌビワコバチ共生系の導入に向けて : 大学生への実践事例をもとに
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概要
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本研究では,共生関係にある植物と昆虫の観察を教室内で簡単に実施でき,生徒が共生の知識を深め,共生を身近な現象として実感することのできる教材として,イヌビワ-イヌビワコバチ共生系の導入を提案し,これを高等学校生物IIで用いる教材とするうえでの利点と問題点を検討することを目的とした。イヌビワは花粉の運搬をイヌビワコバチに託し,イヌビワコバチはイヌビワの雄株の果のう内で産卵,成長,交尾を行う。双方に繁殖上の利益のあるこの関係は,典型的な相利共生とみなせる。本教材は,イヌビワの雄株の果のうを解剖し,虫〓花や鱗片などの観察を行うとともに,イヌビワと共生関係にあるイヌビワコバチの観察を行うものである。2007年7月に,本教材を用いた授業を三重大学教育学部で実践した。また,受講学生へのアンケート調査を行い,本教材の有効性,利点,改善すべき点および問題点について意見を収集した。その結果,受講学生20名のうち7名(35%)が本教材を「有効だと思った」と回答し,11名(55%)が「改善すれば有効だと思った」と回答した。また,教材の準備・管理方法の改善を求める意見や,観察と理解の困難さを危惧する意見などが得られたが,これらは十分に解決できると考えられた。ただし,少人数の大学生を対象とした実践のため,本研究結果は高校の教材としての有効性を判定し得るものではなく,開発を継続し改良を加えることで有効な教材へと発展させ得る可能性を示唆しているに過ぎない。現在の高校生物IIの単元「生物の集団」において,「共生」の扱いは小さく教材もほとんどない。しかし,共生は稀な生物現象でも特殊な現象でもなく,競争や捕食-被食と並び,自然界に認められる普遍的な生物間相互作用のひとつである。その理解を深めるものとして,本教材の導入に向けた研究の意義は大きいと言える。今後,高校の授業で実践し,その効果を検討することが課題となる。
- 2008-07-25
著者
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