環境会計の史的研究
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概要
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本稿は「環境会計(Environmental Accounting)」に関する研究史を整理分析したものであり,主にその成立と展開を比較省察することを通した通史的理解モデルの構築を行うことを目的としている。これまでの環境会計研究の多くは,その周縁的批判と定時的研究に特化しており,少数の先駆的な研究者を除き,通時的な史的研究はさほど実施されてこなかったと考えられてきた。このため,本稿はMathewsによる包括的な類型研究を出発点として,先行研究の整理概観とその通時的分析を試みたものである。その結果,これまで理論的・方法論的課題を焦点化する傾向にあると理解されてきた環境会計研究は,浩瀚な実証研究の蓄積がその背景にあることが明らかとなった。さらに,これらの分析過程でMathewsが提示した類型モデルは,環境会計の進化に伴いその射程を拡張させていく可能性があることも推認された。「解釈に依存する領域」と考えられてきた環境会計は,現在的課題に基づく共時的研究とともに,通時的な整理分析を通してこれを研究史の中で文脈化することにより,議論の応答性を高めることが可能になると考えられる。このことは,環境会計研究の立体的な構想基盤の構築に貢献するものでもある。
- 2010-06-10