障害福祉の制度設計のための新たなモデルについての考察 : パターナリズム、自律及び潜在能力アプローチの視点から
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概要
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本論文の目的は、パターナリズムや自律思想、潜在能力アプローチに基づき、生涯福祉の制度設計のための新たなモデルについて検討していくことである。 戦後、措置制度の枠組みの下、日本では政府が障害者の生活に介入し、障害者に代わりサービス提供機関の決定を行ってきた。行政が大きく介入することで、無料もしくは非常に安価な費用でサービスの提供ができた。しかし、措置制度には障害者のサービスの決定権がなく、自由のないパターナリズムに基づくものとの批判が常にあった。 世界的な新自由主義思想の台頭に影響を受け、2006年に日本で成立した障害者自立支援法では、契約のシステムが導入された。どの契約のシステムは、障害者自身がサービスを決定していく仕組みである。また、サービスの費用負担については、受益者負担となった。このような仕組みは新自由主義思想、つまり自律思想に基づいて導入されたシステムといえる。 本稿では、障害者自立支援法の制度の概観を分析しながら、パターナリズムと自律思想、2つの考え方を統合させたドゥウォーキンの理論、またそれに批判を加えたセンの理論を検討し、障害福祉の制度設計のための新たなモデルについて、考察を行っていくこととする。