中国流通チャネルにおける代理商の企業間関係の形成 : 瀋陽市における事例研究
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概要
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本研究は、バイヤー・サプライヤー間取引の観点から中国の流通小売市場で中核的な役割を担っている代理商制度を中心とした企業間の関係形成の検証を行うものである。代理商については現時点における明確な定義付けはないものの、本稿ではこれを"メーカー(ブランド)又は総代理との代理商契約に基づき、商品を仕入れ、その商品を小売業者の店舗を賃借して販売する「卸売業」と「販売業」を兼務する「中間商業者」"と位置付けた上、代理商制度を中国国内のサプライチェーンを構成する流通分業体制における調整システムと捉え、これら代理商のチャネル内における企業間関係形成の実態を明らかにするものである。中国の流通小売業界は、中国政府最後の保護産業として最も規制緩和が遅れた業界であり、近代流通産業としての歴史は日本や欧米諸国と比してまだ浅い。また中国国内流通小売市場の形成に際しては、中央から地方都市をも含む各政府の政策や規制による影響が色濃く反映されており、さらにその広大な国土は、いまだに地域が異なれば、言語、商習慣、法制、会計制度なども異なることから各都市間を結ぶ流通システムの一元的マネジメントは容易ではない。よって本稿では中国流通小売市場において、その流通チャネルの中核を担う代理商の企業間取引とそれに基づく企業間の関係形成の実態につき、現地代理商へのアンケート調査を通じ解明を試みた。その結果、多くの代理商は、小売業である川下よりもサプライヤーとしての川上に向けた企業との関係形成を強める傾向にあることが判明した。これは、市場が成長基調にあるときには、中間商業者である代理商が川上に向け、サプライヤー企業との関係強化を図ることにより、需要の拡大局面に備えた商品供給能力を確保することによって収益拡大基盤を構築するという一連の戦略行動の表れであると考えられる。それはまさに拡大基調にある現在の中国流通小売市場における企業行動の側面を表すものであり、代理商が顧客との接点を通じて自ら得た販売情報を基に、川上企業との連携を強化していく流れは、今後の垂直統合をも踏まえた中国流通小売市場における新たな事業システム構築への布石となるものと考えられる。
- 2009-09-30