分子の世界の渋滞学 : ガラス転移の物理(第54回物性若手夏の学校(2009年度),講義ノート)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ガラスとは、分子がランダムな空間配置を保ったまま、運動が凍結した状態のことである。これをガラスの定義とすると、窓ガラスに限らず、我々の身の回りには、ガラス的物質が満ち溢れていることに気がつく。ペンキや泥、豆腐やヨーグルト、さらには砂の山も一種のガラスだ。ランダムさを上手に制御して機能する我々生き物も、ある意味ガラス的物質と言ってよいかもしれない。この運動の凍結は、液相にある物質の温度や圧力を急激に下げる、または上げることにより引き起こされる。これをガラス転移と言う。ガラス転移は所謂結晶化ではない。見かけ上、相転移的な特徴も結晶的長距離秩序も示さないまま、特徴的な時間スケールだけが巨視的に発散する、非常に不思議な現象である。ガラス転移は、いわば分子達が交通渋滞を起こした状態なのだ。では、なぜ交通渋滞が起こるのか。そもそも、ガラス転移は純粋に動力学的な転移なのか。それとも背後に我々の目に見えない熱力学的転移が隠れいているのだろうか。この分子の世界の交通渋滞を引き起こす張本人を探して、現在も、活発に研究が行われている。この講義ノートでは、ガラス転移の「平均場理論」とも呼ばれるモード結合理論を中心に、その基礎と最新の研究成果を紹介したい。
- 2010-03-05
著者
関連論文
- 分子の世界の渋滞学 : ガラス転移の物理(第54回物性若手夏の学校(2009年度),講義ノート)
- 28aQL-4 四次元剛体球系のガラス転移(領域12,領域11合同(ガラス転移・過冷却液体),領域12,ソフトマター物理,化学物理,生物物理)
- 28aQL-5 ガラス転移と次元性(領域12,領域11合同(ガラス転移・過冷却液体),領域12,ソフトマター物理,化学物理,生物物理)
- 希薄サスペンジョンの非平衡熱力学(ポスター・セッション・プログラム,第3回『非平衡系の統計物理』シンポジウム(その2),研究会報告)
- 26aTD-7 高密度ガウスコア液体のガラス転移(26aTD 領域11,領域12合同 ガラス合同セッション,領域11(統計力学,物性基礎論,応用数学,力学,流体物理))
- 26aTD-3 サイズ比の大きい2成分系のガラス転移とモード結合理論(26aTD 領域11,領域12合同 ガラス合同セッション,領域11(統計力学,物性基礎論,応用数学,力学,流体物理))
- 21aEC-6 高次元空間におけるガラス転移(21aEC 領域12,領域11合同(ガラスとその関連系II),領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))
- 20pVA-17 ランダム媒体中のスローダイナミクス : ガラス転移から局在化転移へ(20pVA 領域12,領域11合同(ガラス転移・ジャミング転移・レオロジー),領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))
- 25pGV-9 高密度ガウスコア液体における平均場的挙動の解析(25pGV 領域12,領域11合同(ガラス合同セッション),領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))
- 25pGV-8 サイズ比の大きい2成分系における時間スケールの分離とモード結合理論(25pGV 領域12,領域11合同(ガラス合同セッション),領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))
- 24aJF-11 p-スピン球形模型のダイナミクスにおける拘束条件の厳密な取り扱いについて(24aJF 領域12,領域11合同 ガラスおよびその関連系,領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))
- 24aJF-10 サイズ比の大きな2成分系における時間スケールの分離 : schematic modelによる解析(24aJF 領域12,領域11合同 ガラスおよびその関連系,領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))
- 24aBF-6 2成分モード結合理論における実効的な時間スケールの分離の起源について(24aBF 領域12,領域11合同 ガラス合同セッション1,領域12(ソフトマター物理,化学物理,生物物理))