金沢文庫図書館蔵『見性成佛論』について : 思想的特徴及び人物像
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概要
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本稿は,翻刻はされているものの,長い間詳細な研究はなされてこなかった神奈川県立金沢文庫図書館蔵『見性成佛論』における「答者」の思想的特徴及び人物像を明らかにする.『見性成佛論』は「序」を除き44の問答からなる間答集である.特に第4番目の問答は『見性成佛論』の思想内容の中核を示す部分である.問者の「教内教外の理を説きたまへ」の問いに対し,「教」と「襌」の違いを対比しながら説明する.答者はまず「教」での長い学問的修学の必要性,諸仏や念仏に菩提を求める方法を批判的に説明する.次に「襌」(仏心宗)の頓悟について説明し,特に唐代南禅宗馬祖系の人物の言葉を引用し(『景徳傳燈録』からか?)己の心が仏であることを説く.答者は「襌」が伝統的学問的修学仏教とは異なることを主張する.次に,問いに対する拒否の姿勢に関し,『聖光上人傳』では大日禅師が最後は口を閉じて答えなかった(「襌師閉口結舌.不答而讃曰.汝是文殊師利菩薩.為訓我而來歟云々.」)とあるが,『見性成佛論』においても後半の問答(12番目から44番目)では,言葉に終始する問者に対し,問いをそのまま繰り返したり,所謂,禅問答のような答者に問いかけるような回答をしている.このような態度は『聖光上人傳』の問答の答者,大日襌師を彷彿とさせ,まさに,『見性成佛論』の答者が大日房能忍その人である可能性を示す一つの資料と考えられる.
- 2010-03-25
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