ひも状生物接触担体を用いた下水中の汚濁物質除去とリンの回収
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概要
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汚泥発生量が少ないとされる生物接触酸化法に着目し,中小規模の処理施設を対象とした下水処理法について基礎的な検討を行った。具体的には,今までに得た研究成果から,ひも状生物担体を選択し,反応時間の違いによる汚濁物質の除去特性を見出す室内実験,室内実験の結果を踏まえ,実際の下水処理場において,比較的大型の反応槽を用いた実証的な屋外実験を実施した。また,農業分野ではリンの枯渇が懸念されていることから,農地還元を目的としたリン回収の基礎的な実験を行った。室内実験では,ひも状接触担体を取り付けた実験系と取り付けていない対照系の2系列で行った。BODの除去率は,6時間の曝気時間では実験系が対照系よりも高い結果となり,24時間以上ではいずれも55%から93%の除去率を得ることができた。このようなことから,曝気によって有機物は化学的または生物学的に酸化が促進されることにより分解されるが,ひも状接触担体を用いた実験系はより促進されることがわかった。屋外実験は,大阪府内の下水処理場に2m^3の反応槽を設置して,下水処理場の流入下水を対象に実施した。BOD及びCODは一部の除き43〜76%の除去率であり,SSは67〜89%除去できた。リン回収実験は,屋外実験終了後,ひも状接触担体の一部を取り出し,実験系として60℃に制御された電気炉によって加熱した水500mLに浸漬したもの,対照系として常温(20℃程度)の水500mLに浸漬したものの2系列における1時間後の浸漬水中のリン濃度を測定した。常温に浸漬した場合の浸漬水中のリン濃度は0.09mg・L^<-1>であったのに対し,60℃で加熱した場合は3.41mg・L^<-1>であった。およそ40倍近く溶出させることができた。今回の実験によって,ひも状接触担体を用いた方法で下水中の有機物を比較的短時間で除去ができること,リンの回収の可能性もあることがわかった。
著者
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濱崎 竜英
大阪産業大学人間環境学部生活環境学科
-
西村 昌次
大阪産業大学人間環境学研究科
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松田 典友
大阪産業大学人間環境学部
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村井 雄樹
大阪産業大学人間環境学部
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鈴木 實
関西PGS株式会社
-
菅原 正孝
大阪産業大学人間環境学部生活環境学科
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濱崎 竜英
大阪産業大学
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菅原 正孝
大阪産業大学
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