「観念」と「現実」との困難な関係 : ルソーの場合
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概要
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ジャン=ジャック・ルソーという人物は啓蒙思想という一つの流れの中で活動を開始しながらも、次第にそこから離れてゆくことになった。本稿はルソーの代表的なテクストを解釈することを通じてその原因を探求することを主眼とするものである。ルソーと同時代人であった啓蒙思想家たちあるいは啓蒙的主体たちは、一般に、みずからが生きている現場としての社会を対象とし、それを改善するという目的をもって、その対象の内部から思索し、内部から対象に働きかけた。思想家としての活動を開始した当初は、ルソーもまたそのような者として活動していたのであるが、活動を進めるにつれて思想家のそのような在り方そのものがルソーにとって疑わしいものとなってくる。そのような事態はルソーという人物そのものの在り方の特異性が原因だったのであり、そのためにルソーは同時代の啓蒙的主体たちとは一線を画する存在となったのである。