地域的制度のダイナミクスと情報通信技術産業の展開 : フィンランド・オウルを事例として(<特集>地域政策の分岐点-21世紀の地域政策のあり方をめぐって-)
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概要
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近年の北欧諸国におけるラディカル・イノベーション型産業の成長は,同型産業の振興と社会的安定性を重視した国民的制度体系の間に必ずしもトレード・オフの関係がないことを示唆している.本稿では,こうした成功の背景として,国民経済および企業レベルの対応だけでなく,地域経済レベルの諸制度も重要な要因となっている点を仮説的に提示し,その検証事例としてフィンランド・オウルにおける情報通信技術産業の成長を検証した.オウル経済の分析方法には,地域経済発展の制度的要因へ着目し,そのダイナミクスについて,変革主体の形成プロセスまで踏み込んで考察する制度論的アプローチを用いている.オウルの経済発展を支えた諸制度は,国家的な開発方針や企業戦略との対立と協調の中で普及した,地域振興ヴィジョンを共有する諸主体間の協働の下で構築されてきた.米国を典型とする「自由主義的市場経済」とは異なる国民的制度環境の下でも,オウルでは効果的な地域的制度を生成することによって情報通信技術産業の成長を可能にしている.
- 2009-12-30