スイス・高アルプスにおける観光業と農業の共生形態と共生システム(<特集>地域政策の分岐点-21世紀の地域政策のあり方をめぐって-)
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概要
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本稿ではスイス・高アルプスにおける観光業と農業の共生形態の形成・変容とその要因を経済発展の地域差に焦点を当てて解明した.農家民宿と農業の共生形態が1920年代に形成されたオーストリア・高アルプス・チロルと比べて,スイス・高アルプスでは,ホテルを中心とする観光業と農業の共生形態が1910年代に形成された.この差はアルプス前地における資本主義発展の地域差とその影響を受けた,高アルプスにおけるホテルの発展,農地経営規模などの地域差に起因する.スイス・高アルプスでは,高度成長期以降,農業よりも収益が多く,農家民宿よりも賄いの労力が省ける休暇用住宅経営が増加し,共生形態は同経営を中心とする観光業と農業の共生形態に変容した.この共生形態は農業を維持したので,環境・景観の保全を通じて山岳観光リゾートにも役立ったが,チロルに現存している農家民宿と農業の共生形態と比べてグリーン・ツーリズムの色彩は希薄である.1980年代後半以降のグローバル化とともに地域差が顕現した.経営規模が狭小な地域では直接支払額が少なかったため,農業政策が共生システムとして機能せず,農業は衰退し,観光業と農業の共生形態は崩壊した.しかし,観光業が過度に発展せず,かつ土地制度により経営規模が大きく,直接支払額が多い地域や,フレキシブルな加工・販売組織が確立している地域では共生システムが機能しているため,観光業と農業の共生形態は維持されている.
- 2009-12-30
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