「境界」としてのリュジニャン城 : 『メリュジーヌ物語』における空間
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概要
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中世フランスおいて人間と超自然のものとの出会いと結びつき(と別れ)をモチーフとしたテクストを、アルフ=ランクネルは、代表的な妖精の名前をとって、モルガン型とメリュジーヌ型とに大別した。登場人物の空間の移動に着目したとき、人間の側が異界で「幸福な時」を過ごすのがモルガン型の物語であり、逆に超自然のもの(妖精)の側が「人間社会」に移動して「幸福な時」を過ごすのがメリュジーヌ型であるが、一方の代表として選ばれている『メリュジーヌ物語』においては、この出会いの場としての「境界」が、他の物語とは異なった特権的な空間としてあらわれる。そこでは「境界」が出会いの後のカップルの幸福の場として選ばれるのである。その理由を、物語内部(登場人物の属性)と、物語外部(執筆当時のリュジニャン城の状況)から探ってみると、リュジニャン城の「境界」としての性格が浮かび上がってくる。