オーストラリアにおける妊娠時の活性化プロテインCの変動と凝固第V因子遺伝子変異の存在頻度に関する検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
活性化プロテインC(APC)レジスタンスは凝固線溶系において凝固亢進,血栓形成傾向をきたす凝固異常因子とされており,最も多くみられる血栓症の原因として知られている.特に凝固第V因子の遺伝子変異はAPCレジスタンスの遺伝的原因として最もよく認められる.妊娠中は一般的に凝固機能が亢進することが知られているが,このため非妊娠時には問題とならない潜在的凝固異常症が顕在化し得る場合がある.本研究では妊娠中のAPCの抗凝固能の変動を測定し,その変動が妊娠中毒症に影響を及ぼすかどうかについて検討した.オーストラリアにおける正常妊婦150人と妊娠中毒症妊婦50人についてAPCの抗凝固能を測定したところ,妊娠経過中に明らかなAPCの減少が認められた(p<0.001).妊娠中毒症妊婦におけるAPCレジスタンスの存在は50人中11人(22.0%)であり,正常妊婦150人中4人(2.7%)と比し明らかに高頻度であった.さらに,APCレジスタンスを認めた16人について凝固第V因子の遺伝子変異の有無について検討したところ妊娠中毒症4人,正常妊娠1人に遺伝子変異が認められた(p<0.01).これらの結果より,凝固第V因子の遺伝子変異とAPCレジスタンスが同時に存在することにより妊娠中毒症を発症しやすい傾向にあることが示唆された.APCは妊娠中の胎盤内凝固機構において重要な役割を果たしていると考えられ,妊娠中毒症の発症に影響を与えることが示唆された.従って,APCレジスタンスの測定および凝固第V因子の遺伝子変異の検索は妊娠中毒症の予防あるいは病状把握に有意であると考えられた.
- 1997-11-25
著者
関連論文
- オーストラリアにおける妊娠時の活性化プロテインCの変動と凝固第V因子遺伝子変異の存在頻度に関する検討
- オーストラリアにおける妊娠時の活性化プロテインCの変動と凝固第V因子遺伝子変異の存在頻度に関する検討(学位論文の内容の要旨および審査の結果の要旨 第37集(平成10年5月))