アストロサイトにおけるインテグリンα3サブユニットの免疫組織化学的局在
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
インテグリンはα鎖とβ鎖のヘテロ二量体からなる細胞接着受容体で,形態の保持,細胞の分化,創傷治癒,癌細胞の浸潤や転移など,多くの生物学的現象に関わっていることが,培養細胞などを用いた研究で明らかになりつつある.しかし,中枢神経組織におけるインテグリンの変化をヒトの疾患や病態と関連づけて形態学的に論じた報告は乏しい.今回我々は,アストロサイトの細胞活動におけるインテグリンの役割を探るため,正常対照例,脳梗塞例およびグリオーマ例の大脳組織を用いて,アストロサイトに存在するインテグリンの代表的な構成要素であるα3サブユニットの局在を免疫組織化学的に検討した.インテグリンの免疫染色に際してはマウス単クローン抗α3サブユニット抗体(Progen Biotechnic)とCSAシステム(Dako)変法を用いた.正常対照脳では,α3免疫活性は静止型アストロサイトと血管壁に局在しており,特にアストロサイトにおいては細胞質と突起に顆粒状の染色性を示した.急性期および慢性期脳梗塞巣に出現する小型の反応性アストロサイトでは,α3免疫活性は胞体内の微細顆粒状物質として観察された.亜急性期では,大型の反応性アストロサイトの座体辺縁部と近位突起に粗大なインテグリン陽性顆粒が点在していた.一方,グリオーマにおいては,α3免疫活性は腫瘍細胞の胞体と突起の細胞質に局在しており,主に均質な染色性を示したが,顆粒状を呈する領域も観察された.また,梗塞巣,グリオーマのいずれにおいても新生血管ではα3の免疫活性が乏しく,一部の内皮細胞に検出されるに留まった.以上のようにインテグリンα3サブユニットのアストロサイト内局在様式が正常対照脳,梗塞脳およびグリオーマで異なるという結果は,インテグリンが介在する細胞間相互作用が病理学的状況に応じて変化する可能性を示唆している.
- 東京女子医科大学の論文
- 1999-03-25
著者
関連論文
- 1.先天性嚢胞性腺腫様奇形を呈した死産胎児2剖検例についての病理学的検討(第16回学内病理談話会,学術情報)
- 脳梗塞病変における核酸, 蛋白および脂質の酸化的修飾産物の局在
- 6. 福山型先天性筋ジストロフィーにおける大脳皮質・網膜病変の神経病理学的考察(一般演題,第20回東京女子医科大学神経懇話会,学術情報)
- 大脳組織におけるintegrin α3 subunitの免疫組織化学的局在
- 福山型筋ジストロフィーにおけるアストロサイトの未熟性に関する免疫組織化学的検討
- 脳腫瘍におけるインテグリン発現と酸化的ストレスの関連(第323回東京女子医科大学学会例会(平成13年2月24日))
- 脳感染症における反応性アストロサイト内integrin α3 subunitの免疫組織化学的局在
- 福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)胎齢14週胎児脳における基底膜微小欠損の意義
- ラット脳組織におけるVEGFmRNAの局在
- アストロサイトにおけるインテグリンα3サブユニットの免疫組織化学的局在
- 福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)児の網膜病理
- 5.中枢神経系腫瘍新生血管内皮細胞におけるP-glycoprotein(Pgp)の発現と意義(一般演題,第15回東京女子医科大学神経懇話会,学術情報)
- アストロサイトにおけるインテグリンα3サブユニットの免疫組織化学的局在(学位論文内容の要旨および審査の結果の要旨 第38集(平成11年5月))