巡礼地はどこにあるか : サイバーグレース時代における聖の場所性をめぐって
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概要
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かつて、巡礼はある地点から別の地点への物理的な移動を意味する行為であった。巡礼地への移動に伴う困難は、交通が発達していない時代にはとりわけ、神に苦しみを捧げる信仰行為として理解された。先行研究はこの身体移動をもとに、巡礼を聖と俗の往還運動や、日常と非日常の世界を往復する行為として捉えてきた。しかし、今や巡礼を取り巻く環境は大きく変化している。電子メディア上には各宗教の巡礼地のサイトがあり、クリックひとつでいわゆる「ネット巡礼」が可能になった。巡礼地においてしか手に入れることのできなかったお札や「聖水」も、ネットを通じて容易かつ大量に入手できるようになった。本稿の目的は、このようなサイバーグレース時代[Cobb1998]の特徴を踏まえ、巡礼について再検討することにある。特に、カトリックにおける巡礼を対象に、聖なるものがどのように認識され、人々によっていかなる場所として経験されているかについて検討する。
- 2009-06-06