富士行者・食行身禄は本当に「ミロク」だったのか
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
食行身禄(一六七一-一七三三)は富士信仰の行者である。彼は後に江戸を中心に流行した富士講において「元祖」と崇められ、現代の富士信仰研究においてもその名から「ミロク信仰」との関連が論じられた。「ミロク信仰」論は、民俗学者宮田登によって提唱され、日本の民俗事象に見られるメシアニズム・ユートピアニズムに関する理論である。確かに食行は世界を創造した神々が世界を再び支配する時代「身禄の御世」が始まったと主張しているが、それは未来に理想世界を期待する「ミロク信仰」とは相容れないものではないか。また、最近新しく発見されたある写本によると、「身禄の御世」を最初に説いたのは食行の師・月行である可能性がある。この写本を用いると、食行の主張のうち単独では理解できなかった点を解決できることがわかった。よって月行が「身禄の御世」を神より託されたと主張する写本の有用性もより高まったのである。
- 2009-12-30
著者
関連論文
- 富士行者・食行身禄は本当に「ミロク」だったのか
- 小松和彦編, 『日本人の異界観』, せりか書房, 二〇〇六年一〇月八日刊, A5判, 四九三頁, 五〇〇〇円+税
- 富士信仰のある写本と月行作『直相の巻』