沖縄県の高齢者福祉施設における回想法の取り組みについて : 民俗学の視点から
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概要
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高齢者社会を迎え、医療・福祉・地域活動の場において高齢者ケアへの関心が高まっており、回想法という心理療法が注目されている。回想法とは、高齢者が各人の過去に思いを巡らせ、生きる気力、希望を見出し、より充実した人生を生きるための療法で、特に認知症の予防や治療に効果が期待されている。沖縄県内での高齢者施設における回想法の取り組みは始まったばかりであり、まだほとんど普及していない。本稿では、回想法の特徴について簡単に紹介するとともに、筆者が沖縄県内のある老人健康施設で民具を用いて行った回想法の実践について、幾つかの事例を報告する。民俗学は、過ぎ去った時代の庶民生活の様子や今日に至るその時代的変遷を研究の対象とし、民間伝承や民具などに関心を寄せてきた。そのため、民具を用いた回想法においては、民俗学的知識が重要な役割を果たす。本稿では、こうした回想法を接点とした民俗学と高齢者福祉との協働の可能性について指摘するとともに、沖縄県において地域にふさわしい回想法のあり方やプログラムを考察していくに際に留意すべき事柄や課題について考察した。
- 2007-03-31