小・中・高一貫教育の立場から見た物理教育の問題点 : 中学校に「波動」の復活を
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
高校生を物理ぎらいにさせている原因は中学時代から芽ばえている.それは物理を特にむずかしいものとする先入観や授業方法のまずさなどいろいろあげられる.さらに,その原因は内容そのものにもあると考えられる.高校の義務教育化の進む今日,小学校理科から高校の理科Iまではほぼ全員が履習する.そのうち物理分野の内容について学習指導要領と教科書を参考として調べると,中学校から高校にかけての間にはかなりのかたよりと「断層」がみられる.他の分野に比べて力学はくり返し扱われている.しかし,「波動」は削除されている.現行では高校において選択物理を受講しないかぎり波として音や光を習う機会はないことになる.波動は科学的な自然観の育成に寄与し,近代物理の足掛りとなり,情報化社会にあっては情報伝達の手段として極めて重要である.このような意味で,波動は国民必修の学習事項として,小・中・高一貫教育の流れの中に位置づけられるべきものと筆者は考えている.以下,波動の意義ならびに波動を組み入れる方策について考察し,具体的提案をしてみたい.
- 日本物理教育学会の論文
- 1986-06-05