Porphyromonas gingivalis lipopolysaccharidesがラット血中のアディポカイン並びに中性脂肪濃度に及ぼす影響の検討 : Escherichia coli LPSとの比較検討
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概要
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本研究は,歯周病が全身に影響を及ぼす作用機序を明らかにすることを目的として,歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis LPSをラット腹腔内に投与した場合のアディポネクテン及び中性脂肪(trygricerides; TG)産生に及ぼす影響をEscherichia coli LPSと比較した。その結果,アディポネクチンについてはP. gingivalis LPS投与後6時間で濃度依存性に一過性の低下がみられたのに対し,E. coli LPSの場合には投与後48時間で低下が生じた。一方,TGについてはE. coli LPSのみが投与後6時間で上昇が生じ,その後対照群と同じレベルに戻った。TNF-α及びIL-6産生はE. coli LPS投与の場合のみ血中及び肝組織中でも誘導された。抗TNF-α抗体のin vivoでの前投与により,E. coli LPSの場合のTG濃度の上昇は抑制されたが,アディポネクチン濃度についてはいずれのLPS投与の場合にも影響を受けなかった。従って,今回明らかとなったLPS投与によるアディポネクチン産生の低下については,これまで報告されていたようにTNF-α 依存性ではなく,しかもLPSの生物活性の相違により反応のパターンが異なることから複雑な制御機構が存在することが示唆された。これまでに歯周病原細菌の血行への侵入が全身へ影響を及ぼす一因であることを証明する様々なデータが集積されているが,本研究の結果は歯周病原細菌が持つLPSの全身疾患,特にメタボリックシンドロームに対する新たな病原性を示唆するものと考える。
- 2006-06-30