レンチを応用した歯列上三次元咬合力の解析
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概要
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咬合力が適切に作用することは正常咬合を規定する要件の一つであるが,歯列における三次元咬合力の様相は未だに不明である。そこで本研究では,健常有歯顎者の噛みしめ時に各咬合接触面に生じた咬合力の大きさと方向を感圧フィルムによる咬合力測定法と三次元デジタイザによる歯列形状測定法によって測定するとともに,力学的評価法のレンチを応用して下顎の歯と歯列全体について咬合力の合力を算出し,その大きさ,方向,作用部位について検討した。その結果,下顎歯の合力の大きさは後方歯ほど大きく,第二大臼歯で最大値を示した。合力の方向は,第二大臼歯が咬合平面に対して近心舌側方向,第一大臼歯と第二小臼歯では近心方向,第一小臼歯では近心頬側方向から作用する傾向にあった。また,臼歯における合力の作用部位は,多くの歯で頬側咬頭の遠心内斜面にあることが明らかになった。一方,歯列全体の合力は前頭面では咬合平面に対してほぼ直交し,矢状面ではやや近心方向から作用していた。また,作用部位は両側第一大臼歯遠心部の中央付近に位置していた。以上の検討によって,健常者における噛みしめ時の歯列上三次元咬合力の様相が明かされた。とりわけ,下顎臼歯の合力の作用部位が頬側咬頭の遠心内斜面に多く認めた結果からは,歯には咬合力負担の至適部位が存在する可能性が示された。
- 2005-12-27