「災害時要援護度」概念構築の試み : 台風23号水害時における在宅人工呼吸器装着者の災害リスク回避行動の分析から
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概要
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論文(Article)近年,大規模な自然災害が相次ぎ,災害による人的被害を最小限にするため,災害時に特別の配慮を必要とする人々,いわゆる「災害時要援護者」対応が議論されている.しかしその概念については,必ずしも系統的に論じられているわけではない.本稿は,2004年の台風23号水害における在宅人工呼吸器装着者の災害リスク回避行動の分析を通して,「脆弱であること」は単に,心身の障害の程度を指すのではなく,生活主体の要求と客体的資源との関係性により規定されることを示した.具体的には,「災害スキーマの適切さ」「主観的規範の歪みの程度」「対処資源へのアクセス性」が災害リスク回避行動に影響を与えていた.さらに,災害時において脆弱性は,地震や集中豪雨といった外力(ハザード)との関係から顕在化することから,ハザードと脆弱性との相互作用として「災害時要援護度」をとらえることを提案した.本稿の内容構成は,1) 先行研究および在宅人工呼吸器装着者の日常生活の概観,2)方法,3)結果,4)考察である.Many people had heavily losses in large-scale natural disasters. The discussions for alleviation of human suffering caused by natural disasters have started. Especially, important issue is what we should do for the people who need special care in a time of disaster. However, the concept of 'the people who need special care' is not necessarily systematically discussed. This research shows that 'vulnerability' means not only mental-physical disorders but interactions between the demands of people and resources by analyzing risk aversive behaviors of people who take home mechanical ventilation at the Typhoon No.23 disaster in 2004. Concretely, appropriateness of "disaster schema", level of the distortion of "subjective norms", and access to "resources" influence the disaster risk aversive actions. As a result, this research suppose the concept of "the degree that people need special care in times of disasters" as interactions between hazard and vulnerability. The contents of this research are constituted by a general view of daily lifes of people who take home mechanical ventilation and the precedence research, methodology, results and conclusion.
著者
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越智 祐子
同志社大学大学院文学研究科社会学専攻
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越智 祐子
(財)ひょうご震災記念21世紀研究機構
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越智 祐子
同志社女子大学現代社会学部社会システム学科
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越智 祐子
同志社大学大学院 文学研究科 社会学専攻
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