材料と濕度の豫備的實驗と屋内氣候としての濕度
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は豫備實驗の報告として二三の推論をまとめ上げたるもので、材料と濕度との間の關係、即ち吸濕放濕透過等の現象に對する各種材料の比較試驗と、及びこれらの性質に關聯すると思はれる屋内比濕度變化の二三の特殊例に就き報告せんとするものである。從て實用上應用し得る數値を提供し得ないが、材料の撰定上又は設計上に於て濕氣に對する材料の傾向として二三の注意を提供するに過ぎない。即ち第一に、吸濕現象に就き空氣比濕80%以上に於ては、吸濕量は何れの材も著しく増すことを示し、(この點は既往研究に2種の結果あつて、一つは吸濕量が80%頃より却て降下すると云ふ報告、一つは著者と同一意見のもの、兩者に對する批判も述べる)この場合に於ける實際問題として、長時間80%前後の比濕中に放置され、所謂濕潤家屋としての氣候を示す特殊例を示し、第二に、吸濕速度と放濕速度との差異より材料に履歴現象のあり得るのを推定し、實際問題としては屋内比濕度がこの履歴現象を生起せしめ得る樣な變化を爲し得ることを示し、從て濕分の蓄積傾向のあることを注意する。第三には、繊維質材料の濕度に對する反應の大きいのを示し、實際の例としては日本家屋の夜間比濕度變化を示した。尚又竣工後間もない鐵筋混凝土地下室に於て、居室と認めらるゝ室にして繊維質舗装材料を有する如き室に於ては蓄積されたる濕分の排除のために、相當なる換氣量を規定すべきを主張し、併せて混凝土建築の非衛生にみなされるのは(温度的問題は設計により改良し得る)竣工後一年間位の未乾燥状態のみにして其の他は却て木造に比し變化率少なきを論じたるものである。
- 社団法人日本建築学会の論文
- 1934-04-15
著者
関連論文
- 五棟連續鋸型屋根工場建築の風に依る自然換氣輪道
- 居住性の研究に就て : 高輪アパートに關連して
- 過密住戸數の推定
- 環境・公害・建築 (主集 環境問題に対処する)
- 引揚邦人の南方住居の平面計畫に就て
- 英國に於ける無換氣式防毒室問題
- 競技場に於ける氣流の推定
- 29) 風向に對し同一側の2開口部による換氣輸道に就て
- 材料と濕度の豫備的實驗と屋内氣候としての濕度