野原地区における開拓の展開 : 戦後開拓の30年とその後をめぐる一考察
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概要
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戦後開拓地の辿ってきた道筋は、それが労苦の歴史と共にあるがゆえに、私たちにその過去を振り返らせ、人の暮らしと土地との結びつきについて考えさせる力を持っているように思う。本稿では岡山県旧神郷町(現新見市)に位置する野原開拓地を取り上げ、開拓行政や農政に翻弄されつつも、未墾の地を切り拓き、営農を確立するに至った展開を辿った。営農の確立に至る過程では多大な困難があったが、土地に関する個人責任と、共通のインフラ整備に関する協同性の見事なバランスがとれていたこと、また開拓農政の転換に先立って、酪農、苗木、美濃早生大根という三大基幹作物が確定していたこと、地元の人との協力関係がうまくとれていたこと、等によって、野原地区は農業地域として発展した。戦後開拓の成功事例の1つと言える野原開拓地であるが、近年は人口減少が進み、地域の存続という、他の多くの中山間地域と共通の問題を抱えつつある。