生体腎移植を受けた子どもの母親の体験
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概要
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本研究の目的は、生体腎移植を受けた慢性腎不全の子どもの母親の体験を記述することである。ライフヒストリー法を参考にした質的探索的デザインにより、CAPD療法(導入時2〜4歳)、腎移植療法(手術時5〜6歳)を経て現在15〜19歳に達している慢性腎不全の子どもの母親3名に、非構成的面接を行ない、内容を分析した。本稿では、腎移植の意味するものの変化という観点から結果を報告する。母親は、初期の時点から、腎移植を希望的に捉えていた。CAPD療法導入後は、移植はつらいCAPD療法の終わりという意味づけが加わり、腎移植は全ての問題を解決するゴールとなっていた。しかし、移植後、そうではなかったことを実感し、拒絶反応や感染への恐れを抱き、少なくとも3〜4年の間、精神的に困難な時をすごしていた。現在は、これまでのことを肯定的に受けとめており、かつての拒絶反応への強烈な恐れが穏やかな受け身の覚悟に変化していた。そして、子どもから手が離れ、自分自身の人生を考え始める時に至っていた。
- 2001-12-10