横浜市菊名貝塚採集の魚貝類遺存体
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概要
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(1) 横浜市菊名貝塚から採取した縄文時代前期の貝層ブロックをメッシュ寸法が4.0m/m、2.0m/m、1.0m/mの同規試験フルイを使用して水洗し、4.0m/mと2.0m/mメッメュ面上の分離物から採集した魚貝類遺存体を調べて、当時の縄文人が捕獲した魚貝類組成を検討した。(2) 扱った試料一単位の体積は約26000cm^3で6試料を水洗処理したが、魚類遺存体では各試料ともニシン亜目Clupeinaと推定される小形魚とアジ亜科Caranginaeなどの遺存体が相対的に最も多く検出された。(3) これらの小形魚類遺存体は、従来の資料採集法では採集が困難であるため、ClupeinaとCaranginaeは当貝塚産魚類に記録されていないが、今回の採集結果からみて、これらの小形魚類遺存体が当貝塚貝層全体に相対的な高密分布をするものと考えられ、当貝塚貝層の主要部が形成された縄文時代前期初頭をつうじてマアジ、マイワシなどClupeina, Caranginaeに属す海産小形魚が相対的にかなり高い頻度で漁獲されていたものと推定される。(4) 右の推定が正しいとすれば、前期の縄文人はアジ、イワシ類を漁獲対象とする網漁法を行なっていた可能性が強く、従来、土・石錘の分布を中心に述べられてきた縄文網漁についての定説的な解釈とは異なる結果が出される。