ヒュースケンのことゞも(松本芳夫先生古稀記念)
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概要
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本稿は日普通文史の研究の一齣であつて、この両国の条約締結について尽力した一外人の生涯について記するものである。言はば初期日普交渉外史ともみられるものである。ヒュースケンは日米、日普の交渉に通訳として活躍した好青年である。私は早くから彼の生涯について同情を禁じ得ないものがあつた。故国に年老いた母を残して、年若くして外国に横死したこの青年の心情を思うと、誠に気毒に堪えないものがある。田辺太一氏は「ヒュースケン被殺」について、次のように記している。「普魯士条約の談判は、芝赤羽根接遇所(此時外賓接遇の為新に一館を設け、接遇所という)に於てせり、使節オイレンブユルク侯は、其従士の内、荷蘭語を能するものなきを以て、亜米利加公使館の通弁官ヒュースケンを頼み、其通弁にあたらしめたり、これその語をよくするのみならず、下田已末我国にありて、よく事情に通じたるを以てなり、然るに十二月五日の夕方、古川ばたにて何人とも知らず、これが腹部に刃を刺して死にいたし退去たるものあり、……ヒュースケンは、性灑脱の人物なれば、かの護衛の附添ことを嫌いて、兎角に独歩を試むるの僻ありき、当日は彼接遇所にて、普魯士使節談判の通弁をなし了りて、己が宿所、即麻布善福寺に帰らんとせし途中なりき、是に於て、外交の局に当るものは、その犯人の捜索に手をつくしたれども、竟にこれを蹤迹し得ず、云々」、(幕末外交談一五一、二頁、なお福地源一郎著懐往事談「ヒューケン氏の暗殺堀織部正の自殺」参照)この簡単な記述の中にも、彼の幕末外交に於ける活躍とその性格とがうかがわれるのである。自分は次に主としてプロシャ側の史料によつて、ヒュースケンの生涯とその最後の事情を記してみようと思う。
- 慶應義塾大学の論文
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