ヒドロキシクエン酸を生産する微生物とゲノムシャフリングによる生産性の増加
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヒドロキシクエン酸(HCA)は熱帯性植物であるガルシニア(Garcinia cambogia)、ハイビスカス(Hibiscus subdariffa Linn.)に主に含まれる有機酸である。HCAには4種の光学異性体(2S,3S)、(2R,3R)、(2S,3R)、(2R,3S)型が存在する。G. cambogiaには(2S,3S) -HCAが、H. subdariffa Linn.には(2S,3R) -HCAのみが含まれており(2S,3S)-HCAは動物体内で脂肪合成の経路に関わる酵素、ATPクエン酸リアーゼを競争阻害し、脂肪の合成を抑制する。(2S,3R)-HCAは膵臓のα-アミラーゼ、α-グルコシダーゼを阻害し、血糖値上昇を抑える作用がある。本研究ではこの一部の亜熱帯性植物のみにしか存在が知られていないHCAを生産する微生物をスクリーニングし、その生産性を向上させることを目的とした。まずガルシニア並びにハイビスカスからHCAをメチルエステル体として精製したのち加水分解しスクリーニング標品とした。次いで自然界から単離した微生物約2,000株からHPLCを用いて生産菌をスクリーニングした。Streptomyces属とBacillus属の候補菌株2株を大量培養し、培地上清からHCAをメチルエステル体として精製した。それらの^1H-NMRスペクトルはハイビスカス由来のHCAメチルエステルと一致した。次いでこれらの絶対構造を決定するため、HCAメチルエステルを合成し、キラルカラムを用いて各異性体を分離できる条件を確立した。分析の結果上記微生物が生産するHCAはハイビスカス型の(2S,3R) -HCAであることが判明した。次いでゲノムシャッフリングによる高生産株の取得を試みた。Streptomyces属の胞子、Bacillus属をNTGまたはUV処理し、得られた変異株からプロトプラストを調製した。これらのプロトプラストを再生させた後、HCAの生産性が向上した変異株を単離した。これらはエポキシアコニット酸に対する耐性が上昇し、3回に渡るゲノムシャフリングで元の株の約5-13倍のHCA生産性向上が認められた。以上ヒドロキシクエン酸を生産する微生物を初めて同定し、ゲノムシャッフリングによりHCA増産株を育成した。
- 福山大学の論文
著者
-
山田 靖宙
福山大・生命工
-
山田 隆志
福山大・生命工
-
飛田 浩之
福山大学生命工学部応用生物科学科
-
山田 隆志
福山大学生命工学部応用生物科学科
-
山田 靖宙
福山大学生命工学部応用生物科学科
-
山田 隆志
福山大学生命工学部
関連論文
- 2H16-4 臭素系難燃剤を好気的に分解する微生物の単離(環境浄化・修復・保全技術,一般講演)
- ヒドロキシクエン酸を生産する微生物とゲノムシャフリングによる生産性の増加
- 発癌性物質の代謝や血圧調節に関わるエポキシド加水分解酵素 : 三次構造から見えてきたユニークな反応機構とその生理的役割