アジア国別産スッポン油の脂質クラスおよび脂肪酸組成に関する比較研究
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概要
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スッポンは爬虫類の亀目スッポン科の動物であり,体形から見てもわかるように亀の仲間で淡水に棲息する。その甲はほぼ円形で平たく,表面は厚い皮膚に覆われて鱗板を欠き,側縁部が軟らかい。頭頸部が極めて細長く,吻部は細長い管状となって先端に鼻孔が開口している。上下の顎は厚い肉質の唇に覆われるが,硬く縁が鋭く噛む力が強い。砂泥質の水底に横たわって過ごすことが多く,ときどき頸をのばして管状の鼻先を水面上に突き出し,呼吸する。しかし水中生活でのガス交換は,軟らかい甲の表面,総排出腔,口腔内での皮膚呼吸による率が高い。その天然の餌は魚,カエル,エビ,貝,昆虫,ミミズなどである。初夏に水辺土砂に穴を掘って産卵し,1回に10〜20個,多いものは30〜60個ほどを産む。スッポンは世界各地で食用に供され,日本では高級料理として古くから賞味される。天然産が減少した昨今では,浜名湖地方をはじめ各地で養殖が盛んであり,成熟すると甲長30cm,体重3kgほどに達する。また中国では,漢方薬としても古くからスッポンが珍重され,中国5000年の歴史のなかで経験的に知られた多くの漢方知識をまとめたといわれる「中葯大事典」には甲羅から頭,肉,胆のう,血液,卵,脂肪,甲羅からとれるゼラチンにいたるまで,スッポンのあらゆる部位を薬として利用するための方法とその効用が書かれている。このように確かな優れた効果ありという評判がありながら,その科学的裏付けが充分になされていなかったように思われる。ところが近年になってスッポン成分には生化学的見地から,その強精効果のみならず,肝臓病,動脈硬化,癌などの成人病にも驚くべき効能のあることが解明されつつある。その一躍クローズアップされた爬虫類成分は,シスタチオニンやタウリンである。とりわけシスタチオニンは体内で強肝解毒作用を発揮するグルタチオンの前駆物質であり,これを含有するスッポン成分は細胞毒といわれる悪い活性酸素を除去する作用がある。本報では中国,台湾,バングラデシュと日本産スッポンの脂質クラスおよび脂肪酸組成の分析を試みたので,α-リノレン酸系列(ω3或いはn-3)脂肪酸,とくに,α-リノレン酸,エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)について,さらにパルミトオレイン酸の存在について述べ,それらの比較検討を行う。