太陽-地球系L2 点周りのリサジュ基準軌道の設計
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概要
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太陽- 地球系のラグランジュ点の一つのL1 点にはESA/NASA 共同ミッションのSOHO(Solar Heliospheric Observatory)が1995 年12 月に打ち上げられ現在も観測を続けており、太陽- 地球系のL2 点にはNASA のWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)が2001 年6 月に打ち上げられ現在も運用されている。これらのラグランジュ点ミッションの最初のものは、1978 年8 月にL1 点に打ち上げられたNASA のISEE-3(International Sun-Earth Explorer-3)である。今後も、L2 点で天文観測する宇宙機が幾つか計画されている。日本においても、太陽- 地球系L2点で観測を行なう2 つのミッションの検討が進められている。赤外線天文衛星SPICA(Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics)と近赤外線による高精度位置天文観測衛星JASMINE(Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration)である。SPICAはポイント観測型ミッションなので、どちらかと言うとハロー軌道が適しているが、JASMINEはサーベイ観測型ミッションであり、サイズの小さいリサジュ軌道が適している。リサジュ軌道やハロー軌道は不安定なため数ヶ月間隔の軌道保持制御が必須であるが、軌道決定誤差や軌道制御誤差があっても、姿勢系からの大きな外乱がなければ、年間1m/s程度のΔVで軌道保持できる。これを実現するため、正確な摂動モデルの下でΔVゼロの基準軌道を前もって設計しておき、それに追従する様に数ヶ月間隔で保持制御が行なわれている。欧米では3 次以上の解析解を求め、それを初期軌道として、各半周軌道の位置・速度のmatching 条件を満たす解を数値的に求める事で、Δ Vゼロの基準軌道を設計している。この方式はSOHOに対して初めて適用され、1998 年に姿勢異常が発生するまでの約2 年間では年間1.7m/sのΔVで保持されている。因みにISEE-3 では、年間10m/s 程度の保持制御量を必要とした。上記の欧米の方法は高次解析解を必要とする難点があるため、本報告では、非線型計画法の解法の一つである逐次2 次計画法 (SQP 法; Sequential Quadratic Programming) を使い、高次解析解を求める事なく、ΔVゼロのリサジュ基準軌道を設計する方法を示す。摂動としては、地球公転軌道の離心率の影響と月潮汐力を考慮した。この他の摂動として、太陽輻射圧と惑星潮汐力があるが、輻射圧はほぼ一定の加速度であり惑星潮汐力は小さいので、本報告の手法は実際の太陽系モデルにも適用できると考えられる。