重症頭部外傷患者に対する低体温とバルビタールの併用療法と高浸透圧単独療法との効果の比較 : 頭蓋内圧,脳潅流圧,脳酸素代謝と転帰との関係
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
重症頭部外傷患者の頭蓋内圧(ICP)亢進と脳潅流圧(CPP)低下は,転帰に影響する重要因子である。それらに対する神経集中治療法のうち低体温療法(HT),バルビタール療法(BT)の併用と高浸透圧療法(OT)単独との効果を比較するため,ICPとCPPに加え頻静脈血液温(Tjb),脳循環と酸素代謝の需給バランスを示す頚静脈洞酸素飽和度(SjO2)と両側前額部の局所脳酸素飽和度(rSO2)を連続モニタリングし,転帰との関連からそれらの効果を比較・検討した。対象は入院時昏睡の重症頭部外傷患者23例(10-62歳)。全例に過換気とOTを施行し,HTを9例,BTを6例に併用し,OT単独8例を対照とした。評価は,a)BT投与量による各パラメーターの比較。b)HTの程度による各パラメーターの比較。c)受傷後72時間以内の各パラメーターの異常値(ICP≧20mmHg, CPP≦60mmHg,脳虚血を示すSj02<55%とrSO2<60%,脳充血を示すSjO2>75%とrSO2>80%)を呈した回数(時間),d)3ケ月後の転帰,との関係を比較・検討した。結果 a)BTの投与量とICPの低下及びCPPの上昇が関連した(p<0.05)。b)Tjbの低下に伴いICPの低下とCPPの上昇(p<0.05)がみられた。c)ICPはBT群で,CPPはHT群でそれぞれ異常値を示す頻度が高かった。SjO2と非損傷側rSO2には,3群間に有意差を認めなかった。損傷側rSO2<60%はBT群で多く(p<0.001),損傷側rSO2>80%はHT群で多かった(p<0.0001)。d)転帰は,HT群で機能予後良好例が多かった(p<0.0005)。結論 重症頭部外傷患者の低体温併用療法は,CPP低下や損傷側の局所酸素代謝の異常を示しても,バルビタール併用療法や高浸透圧単独療法より機能予後改善が期待できる。
- 杏林医学会の論文
- 2003-03-30
著者
関連論文
- B-7 聴神経腫瘍摘出時におけるABRモニターについて(一般口演,第27回杏林医学会総会)
- A-18 TIAにて発症した頸部内頸動脈狭窄症の1手術例(一般口演,第26回杏林医学会総会)
- B-19 三叉神経痛にて発症した内頸動脈瘤の1例(一般口演,第23回杏林医学会総会)
- B-11 Malignant-fibrohistiocytomaの1症例(一般口演,第22回杏林医学会総会)
- 重症頭部外傷患者に対する低体温療法,バルビタール療法および高浸透圧療法の効果の比較検討 : 特に,頭蓋内圧,脳潅流圧,脳酸素代謝との転帰との関係(博士(医学))(杏林大学学位論文要旨および審査要旨)
- 重症頭部外傷患者に対する低体温とバルビタールの併用療法と高浸透圧単独療法との効果の比較 : 頭蓋内圧,脳潅流圧,脳酸素代謝と転帰との関係