有用細菌の凍結乾燥
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概要
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有用細菌というものは以前には非常に限定された種類の菌に限られていた。チーズ、バター、ヨーグルトをどの乳製品の製造には経験的に得られた乳酸菌の純粋培養が古くから利用されてきたが、その他の細菌の働きを利用する食品の製造では現在もなお自然醗酵に依存しているものが多い。もつとも醸造食品の分野においては、麹菌や酵母が古来大いに利用されている。糸状菌や酵母、あるいは抗生物質の製造に利用されている放線菌の優良菌株の保存把凍結乾燥を応用する問題は、興味深く実用的にも重要な問題であるが、微生物といつてもこれらの菌は細菌とは異なつた点が多く、私の専問外でもあるので、本日は有用細菌ということに限つてお話したい。食品工業以外の分野での細菌の利用としては、乳酸菌による乳酸製造、酢酸菌による酢酸製造、Clostoridiumによるアセトン・ブタノール製造などが以前から行なわれてきたが、アミラーゼやプロテアーゼなどの細菌酵素の工業的生産、さらには醗酵法によるアミノ酸の製造の工業化に伴つて、有用細菌の種類は飛躍的に増大してきた。産業的を面と直接関係はないが、微生物定量法に用いられている各種細菌もまた有用細菌に属する。今後人間によつて積極的に利用される細菌の種類はますます増加してゆくであろうし、従つて有用細菌の凍結乾燥についての諸問題も結局は細菌の凍結乾燥の一般的を問題に還元されることになつてくるが、本日は私共が行つてきた乳業用乳酸菌の凍結乾燥の成績を中心にお話したい。
- 1965-04-05