18)BCG及び精製ツベルクリンPPD-Sの乾燥過程における飛散について
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概要
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細菌を乾燥すると,その過程で飛散が認められる事実は既に欧米に於て知られ,スタムやワクチンの乾燥に重大な警鐘が鳴らされて来た事実は衆知の所である。演者は昭和34年3月の第32回日本細菌学会総会のシンポジウムで飛散菌を捕促する簡単な装置を提示して,欧米の諸報告に見られないような,より定量性のあるdataを示し,特にアンプルから実際にとび出す細菌数に焦点をしぼつて検討を加えたものであつた。そのとき使用した細菌はE. coliであつたが今回は協同研究によつてBCGについて,更に精製ツベルクリンについてこの飛散を検討した結果について報告する。A) BCGの飛散 第1表 媒液と飛散生菌数[table] 第2表 乾燥速度と飛散生菌数[table] これらの表から次のように考えられる。1)Sodium Glutamateを媒液とする場合でも蒸留水の場合でも飛散生菌数は生残率に影響を及ぼさない。生残率は生き残り方を示すのではなくて飛はずに残る。その残り方を示すのではないかという,乾燥の諸問題に共通した重大な不安は大部分除かれたと考えてもいいであろう。2)Sodium Glutamateの濃度の増加と共に飛散を防ぐ意味に於ける媒液の保護的作用が認められる。3)加熱濃度を40℃から0℃に変え,乾燥速度を遅くしてやると,0℃の場合の方がむしろ飛散生菌数が増加した結果を示し,E. caliの場合の演者のさきの報告と今回の協同研究とはよく一致した傾向を示す。これは一度飛散菌トラツプに捕促された生菌が尚,乾燥されるのであるがこのときの両条件の差が一部分はきいている筈である。演者のさきの報告及び今回のBCGの報告から0〜40℃の間の加熱温度の変化による乾燥速度の違いによつては,むしろ飛散生菌数の大きな変動がなく,アンプルを0℃の水槽につけてやる等という方法は飛散に対して無力であると見做し得る。B)ツベルクリンの飛散 [PPDS] 少量のPPDSを凍結乾燥した場合,アンプル差が認められることがあるので,PPDSの凍結乾燥による飛散の有無を調べた。なおPPDSの飛散程度の定量は,微量の飛散物質を皮内反応で確かめなくてはならないが,微量の場合には困難であるので,実際に分注乾燥するよりも稍多い試料を分注して実験を行つた。即ち,実験1では,凍結乾燥前アラビアゴムを添加した稀釈液としないそれとによつて2mg/mlの濃度としたものを0.5mlづつ分注した。また実験2では水によつて20mg/ml, 200mg/mlの2種の濃度をつくりその0.5mlづゝ分注した。凍結乾燥は佐原武装置で行つた。力価試験は,青山B株死菌流バラ浮遊液で感作したモルモツトを用い,上記乾燥試料をPhosphate bufferで希釈したものを背部に0.1mlづつ皮内注射し,24及び48時間後の反応の大きさを測定した。その結果(1)1ml以上の場合,例え飛散がおこつてもアンプル内容の力価に変化を与えるほどの飛散がないことを知つた。(2)従つてアラビヤゴムの添加は1mg以上の場合必要がない。(3)飛散した量の検討は本実験で行つた方法では正確な価を得ることは困難である。(4)実際にPPDSは1mg以下の微量即ち10γ又は5γなどの場合の飛散の有無,アンプル差等の検討は本実験の方法からは証明することが困難のようである。
- 低温生物工学会の論文
- 1960-07-17
著者
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