12)有機溶媒の凍結乾燥
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概要
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高分子物質の乾燥には大低真空(加熱)乾燥が用いられているが,凍結乾燥法によれば,乾燥時間が著しく短縮され,また得られたポリマーの取扱いが簡便になるなど製品の品質も向上することが知られている。しかし,有機溶媒の凍結乾燥に関する経験は必ずしも多くないので,その可能性に関する検討を試みる。有機溶媒として,手近にThermal dataが存在し,融点,蒸気圧の適当と思われるもののうち,次のようなものについて,昇華熱を計算した。略蒸気圧の順序に列挙すれば,Cyclobenzene (107 cal/g), Benzene (128 cal/g), p-Dioxane (150 cal/g), tert Butyl alcohol (173 cal/g)水(676 cal/g), ter Amyl alcohol (166 cal/g), p-Xylene (137 cal/g), o-Xylene (141 cal/g), Cyclohexanol (155 cal/g),()内は融点における昇華熱の計算値。昇華熱は融解熱,気化熱,比熱等を用いて計算した。比熱の温度変化を無視し,理想気体として取扱つているが,そのための誤差は最後の桁に効く程度であろう。蒸気の排気には,運動粘性率が大きな影響を持ち,他のパラメータを定めておけば,乾燥連度は運動粘性率に比例する。(ウエルバの氷についての研究)。上記物質の運動粘性率は見付けることが出来なかつたが,他の物質から推定して,水の1/5〜1/10であろう。しかし,我々の氷の場合の経験からすれば,決定的に困難なのは,材料への熱伝達である。この点では有機溶媒は水に比べて決定的に有利である。特に蒸気圧の大きなものでは対流による良好な熱伝達が期待されるので,昇華熱データから見るよりも更に有利だと思はれる。
- 低温生物工学会の論文
- 1960-07-17