木質系エネルギーの今日的利用と将来的可能性(自由論題論文,1995年秋季大会)
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概要
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かつて日本における森林利用の1つであった薪利用は,戦後の経済発展に伴う燃料革命により日常生活においてその主役の座は石油,ガス等に取って代わられた。しかし,長野県伊那市周辺において旧来からの薪利用とともに外国製薪ストーブの普及により,わずかずつであるが薪の需要が伸び始めてきていることが認められる。そこで,本報告では現在における薪利用・生産状況から,それらが行われている要因を分析・検討することを課題とした。森林組合における販売を目的とした薪生産は,「薪需要の存在」を前提としながらも,「労務対策」,「広葉樹の有効利用」といった目的も伴って行われているが,広葉樹林の奥地化等による生産コストの問題が今後の課題となる。旧来からの薪利用では,自家労働による薪生産を可能とした「農閑期」の時間の確保が,人口の高齢化,あるいは集落外での恒常勤務の増加から困難となっており,薪利用の衰退過程をたどっていると言える反面,薪特有の良さから利用が継続しているとも考えられる。「自然派指向」「精神的に豊かな生活」を利用動機とする新規の薪利用者は非森林所有者が多く,薪の確保が困難となっているのが現状である。今後の薪利用普及には,非森林所有者に対する薪の安定的確保が課題となる。
- 林業経済学会の論文