「地域内循環系」の試論 : 鰹節ばい乾用薪材をめぐって(自由論題論文,1994年秋季大会)
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概要
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資本主義の再生産システムがグローバルに展開する一方で,小さな市場圈が地域内で完結している姿を検討することは,多くの論点を含む。本稿では,鹿児島県南薩地域の事例から,地域資源の地域的フローの形成を,閉鎖的な真空管としてではなく,巨大市場をメインシステムとする重層構造の中に積極的に位置づけた。まず,「地域主義」学派の理念と制度論的アプローチとの双方の概念を整理した上で,「地域内循環系」という重層構造の概念を図示した。ここで,経済学分析の光の届かない「コモンズ(共)」の部分の存在を指摘した。すなわち事例では,地域資源をフロー化する生産活動が,伝統的な地場産業と結び付くことで,「コモンズ(共)」的部分を残し,且つ域内の経済的・物資的循環を保ちながら外部市場と有機的に結合している。地域的フローの形成を,内発的発展の一方向として位置づけるためには,さらに踏み込んだ議論が必要とされる。
- 林業経済学会の論文