量子色力学が解き明かす核子の構造と質量の起源 : 核子内の海クォークは質量にどれほど寄与するか?(最近の研究から)
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概要
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陽子や中性子といった核子は,量子色力学(QCD)と呼ばれる強い相互作用によってクォーク同士が互いに結び付けられた複合体であり,その力学を解くことによって核子の多様な性質を導くことができる.特に各クォークが担う核子の質量の大きさを示すパラメータであるシグマ項は,核子の構造の理解に役立つだけでなく,核子を用いた素粒子・宇宙観測実験の鍵となるパラメータである.ところが,核子散乱実験やカイラル有効理論による評価では不定性が大きく,特にストレンジクォークの寄与は純粋に海クォークからの寄与であるため,QCDによる直接的な計算が重要な課題となっていた.近年,厳密なカイラル対称性に基づく格子QCD計算が大きく進展し,信頼性の高い評価が初めて可能になってきている.本稿ではQCDの第一原理計算によるシグマ項の最近の研究結果を紹介し,暗黒物質探索実験やフレーバー物理に与える影響についても述べる.
- 2009-08-05