身体の聖化 : 宗教哲学の一視点(<特集>宗教と倫理)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
人間の自然・本性(ピュシス)はヘブライ・キリスト教の伝統にあって、すでに完結したものではなくて、無限なる神性(善性)との結合へとどこまでも開かれたものであった。それゆえ、「魂=神的なもの」を身体から離れて自存するものと看做す何らかグノーシス主義的な見方も、逆にまた、何であれ物体的要素に魂や精神を還元するような唯物的自然科学的な見方も、多分に人間把握、自己把握の虚偽を孕んだものとなろう。そこで、人間本性に与えられた可能性の開花・成就の道を問いゆくとき、身体ないし身体性とは人間本性の変容を担うものとして見出されてくる。そして身体の聖化とは、そのより善き変容を、またいわゆる神化(神的生命への与り)を指し示すのだ。拙稿は、こうした身体の聖化という事態の意味と問題射程を、主として東方・ギリシア教父の伝統の集大成者と目される証聖者マクシモス(七世紀)の文脈に即して、少しく明らかにしようとするものである。それは、およそ宗教哲学的探究の基本のかたちを見定めるための一助ともなろう。
- 2009-09-30